孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

「承知いたしました」

 主人の要望を聞き、さっそくキッチンのほうへ向かう彼女の姿は、まるでこれまでの自分を見ているみたい。待遇はまったく違うけれど。

 沢木さんが家事をやってくれるなら、この家での私の役目はなにがあるだろう。

 ふとそんな考えがよぎったものの、奏飛さんが部屋の案内を始めたのですぐに意識は逸れていく。広々としたリビングに入ると天井の高い吹き抜けになっていて、二階の部分に立派なグランドピアノが置いてあるのが見えたからだ。

「ピアノがある! 奏飛さん、弾けるんですか?」
「多少ね。黒凪家では強制的にピアノを習わされるから、瑛司たちも弾けるよ」
「すごい……!」

 ピアノが弾ける男性は知り合いにいなかったから、ちょっぴり感激する。しかもこの奏飛さんだもの、ビジュアルがよすぎる。

 もう高級レストランの外で漏れ聞こえる音に耳を澄ませなくてもいいんだ。あの演奏もとてもよかったけれど、奏飛さんが奏でる音色もぜひ聞いてみたい。

「私は全然弾けないけど、聞くのは好きなんです。今度聞かせてください」
「〝ねこふんじゃった〟でいい?」
「できれば違うものが」

 いたずらっぽい顔をする奏飛さんに正直に返すと、彼はふっと自然な笑みをこぼした。