孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

 瑛司さんは単純に思ったことを口にしているように感じるけれど、奏飛さんの怒りがむくむくと膨れ上がっているのがわかる。私が黙ったままでは皆を疑心暗鬼にさせるだけかもしれない。

 思いきって「あの!」と声を上げると、皆が口を閉ざしてこちらに視線を向けた。ひとつ息を吐き、落ち着いて嘘偽りのない思いを口にする。

「私は、皆さんの生活レベルとはかけ離れた家庭で育ちました。財産に興味はあませんが、結婚すれば暮らしが少しでもよくなるんじゃないかと思ったのも事実です」

「深春……」

「でもそれ以上に、奏飛さんと家族になりたいと思ったんです。私の手を取って、新しい道へ連れ出してくれた、他の誰でもない彼と」

 私を嗜めようとしたのであろう奏飛さんだったが、言葉を続けるとその目を見張った。

 黒凪家ほどの富豪なら、不純な目的で寄ってくる人も少なくないだろう。でも、自分は違うのだとわかってもらいたい。

 一瞬、その場がしんと静まり返った。背筋を伸ばして前を見据えていると、厳しい表情のままのお義母様が「深春さん」と呼ぶ。

「結婚には承諾したけれど、まだあなた自身を認めたわけじゃない。黒凪家の一員として、奏飛の妻として相応しいと判断するまではね。これからの振る舞い次第では、離縁してもらう可能性もあると頭に入れておいてちょうだい」