「お待たせしました」
笑みもなく、儀礼的にといった感じで奏飛さんが挨拶をすると、ダイニングチェアに座っていたお母様らしき女性が立ち上がり「いらっしゃい」と返した。
彼女の隣に、六十歳くらいのロマンスグレーの男性が並ぶ。顔立ちが奏飛さんと似ていて、お義父様だとすぐにわかった。
「まさか奏飛が結婚相手を連れてくるとはね。ようこそ、黒凪家へ」
にこりと微笑むお義父様に思いのほか穏やかな調子で迎えられ、私も丁寧にお辞儀をする。
「はじめまして。深春と申します」
「奏飛の母です」
続いて自己紹介してくれたお義母様は、長い髪を後ろですっきりとまとめ、ボルドーの口紅が似合うとても綺麗な人だ。が、目が笑っていないように見えるのは気のせいだろうか。
美の迫力もあり若干怖気づきそうになる私に、彼女はやや眉を下げて話しかける。
「あなたの事情は聞いたわ。ご両親を亡くして、つらい思いをされたのね」
同情されているのかと思ったのもつかの間、美しい顔がすっと冷たく変化する。
「だから、奏飛との結婚を決めたのかしら? 黒凪家の財産が目当てで」
敵意を孕んだ眼差しを突き刺され、私は言葉を喉に詰まらせた。さっそくの先制攻撃は、ショックより驚きのほうが大きい。
笑みもなく、儀礼的にといった感じで奏飛さんが挨拶をすると、ダイニングチェアに座っていたお母様らしき女性が立ち上がり「いらっしゃい」と返した。
彼女の隣に、六十歳くらいのロマンスグレーの男性が並ぶ。顔立ちが奏飛さんと似ていて、お義父様だとすぐにわかった。
「まさか奏飛が結婚相手を連れてくるとはね。ようこそ、黒凪家へ」
にこりと微笑むお義父様に思いのほか穏やかな調子で迎えられ、私も丁寧にお辞儀をする。
「はじめまして。深春と申します」
「奏飛の母です」
続いて自己紹介してくれたお義母様は、長い髪を後ろですっきりとまとめ、ボルドーの口紅が似合うとても綺麗な人だ。が、目が笑っていないように見えるのは気のせいだろうか。
美の迫力もあり若干怖気づきそうになる私に、彼女はやや眉を下げて話しかける。
「あなたの事情は聞いたわ。ご両親を亡くして、つらい思いをされたのね」
同情されているのかと思ったのもつかの間、美しい顔がすっと冷たく変化する。
「だから、奏飛との結婚を決めたのかしら? 黒凪家の財産が目当てで」
敵意を孕んだ眼差しを突き刺され、私は言葉を喉に詰まらせた。さっそくの先制攻撃は、ショックより驚きのほうが大きい。



