孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

 亡くなった両親への敬意も忘れない彼を、私は人として素敵だと純粋に思う。本当に他人に興味がない人だったら、ここまでしないんじゃないだろうか。

 やっぱり彼は優しい人。胸が熱くなるのを感じ、「ありがとうございます」と心から感謝を伝えた。

 霊園は練馬区にある。花屋に寄って買った白いカーネーションと、水を入れた桶を持って両親が眠る場所へ向かう。

 毎年、命日だけはここへ来るのを許されていたが、お墓参りをするのは私だけだったから誰かと来たのは初めてだ。

 今日も暑い日差しが降り注ぐ中、奏飛さんと一緒に掃除をして、綺麗になった墓前にふたりで並んで手を合わせる。

 ……お父さん、お母さん。私はこの人のお嫁さんになるよ。

 私たちの間に愛はない。でも、何年も一緒に暮らしてきた親戚よりも、昨日出会ったばかりの彼のほうが、私を大切に扱ってくれる。こうやって、お父さんたちに手を合わせてくれる人なの。

 たとえ階級を上げるためだけの結婚だとしても、私は精一杯彼のために尽くそうと思う。

 妻として添い遂げる覚悟を新たにゆっくり目を開け、黒い石に刻まれた大切なふたりの名前を見つめた。