孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

 すぐに私に気づいて腰を上げた彼と挨拶を交わした。

「ちゃんと休めたか?」
「はい。お部屋も食事も堪能させていただきました」
「それはなにより」

 軽く頷いた彼は、自然に私の荷物を持って歩き出す。いつでも紳士的で、駐車場に来ると車のドアまで開けてくれるので、それくらい自分でしますよと言いたくなってしまうくらいだ。

 おとなしくされるがままになっておくのも上流階級のマナーなのかもしれないと思いつつ、今日も助手席に乗り込んだ。

 運転席に座った奏飛さんが、シートベルトをしながら口を開く。

「さっそく婚姻届を出しに行きたいんだが」
「えっ、もう!?」
「結婚の承認は得たからな。それを覆されないためにも早く手続きを済ませておく」

 それって、私と会ったらご両親の意見が変わる可能性もあるということなんだろうか。ますます怖いな……。

「その前に、深春のご両親がいる霊園を教えてくれるか」

 不安が増幅するも、予想外のひと言に私はぽかんとする。

「お墓、ですか?」
「ああ。君をもらうのだから、一応挨拶しておこうと思って」

 奏飛さんはエンジンをかけながら当然のように言った。

 わざわざお墓参りをしてくれるんだ……。