孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

『フォーマルな服も持っておいたほうがいい』と、必死に遠慮する私に構わず買い与えられたのだが、顔合わせのために購入したのだと納得する。

 私がプロポーズを断っていたらそのままプレゼントするつもりだったらしい。彼の財力には本当に感服する。

「さっそく黒凪家にお邪魔するのか……」

 パウダールームで曇りのない鏡に映った自分と目を合わせ、ひとつ息を吐く。

 すでに私の事情を説明して一応結婚も認めてもらえたらしいが、上流階級の方々にどんな風に迎えられるのか想像もできなくて不安しかない。

 朝食も済ませてチェックアウトすると、そのまま七階にあるサロンへ向かう。ここも、きちんとしたヘアメイクをするために奏飛さんが予約しておいてくれたのだ。至れり尽くせりで恐縮してしまう。

 髪は適度に抜け感のあるシニヨンに、メイクは落ち着いた仕上がりにしてもらってロビーへ降りると、ひと際人目を引く容姿の男性がソファに座っていた。

 今日はスーツではないが、スマートカジュアルなセットアップもとても洗練された印象を受ける。

 奏飛さんと会うのはまだ二回目だし、姿を見るだけで緊張してしまうのは致し方ないだろう。ひとまずフロントに鍵を返してから、そわそわしつつ彼の元へ歩み寄る。