その日の晩、音羽と一緒に寝室へ向かった深春がひとりでリビングに戻ってきた。
「音羽、寝た?」
「うん。今日は皆にいっぱい遊んでもらったから、興奮してなかなか寝なかったけど。おもちゃもたくさんもらったしね」
母性に満ちた笑みを浮かべる彼女に歩み寄り、「お疲れ様」と労って優しく抱きしめる。腕の中で俺を見上げて微笑む彼女が可愛すぎて、流れるようにキスを交わした。
唇から溶けそうな甘いキスをして、いたずらっぽく口角を上げる。
「俺たちもベッドへ行こうか。寝かせてあげられないかもしれないけど」
「寝かせてください……!」
冗談を言って笑い合った後、彼女の手を取って二階へ向かう。
「その前に、深春に聞いてもらいたい曲があるんだ」
「えっ、なに?」
「俺たちの、運命の曲」
キョトンとする深春だったが、俺がピアノの前に座ると彼女も喜んでソファに腰を下ろした。
ひとつ息を吐き、レストラン以来のあの曲を奏でる。一音一音大切に指を下ろしていくと、深春がなにかに気づいたようにみるみる目を見開いた。
シューマン=リストの〝献呈〟──この曲のもうひとつの名前は〝君に捧ぐ〟。
あの時も今も、君が幸せであるようにと願っている。そしていつまでも、俺が君に誠実な愛を捧げよう。
。*⑅ꕤ End ꕤ⑅*。



