孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

「あの時、すでに繋がってたってことか……」

 深春を見やる俺の頭の中には、レストランに行っていた当時の記憶が蘇る。

 あの頃、支配人と俺との間でよく話題になっていた。中に入ることはなく、外のベンチにただ座っている女性がいると。

 最初はやや不審に思って支配人が声をかけたのだが、特に悪いことを考えているわけではなさそうだし、なによりとても幸せそうに耳を澄ませていたようで……。

『奏飛くんのピアノが好きなんだそうだ。でもお金がないから入れないんだと。聞くだけでもいいなら、好きなだけどうぞって気持ちになってねぇ』

 支配人は穏やかにそう言い、その子は自由にさせておくことにしたのだった。

 以来、『今日もあの子が来ているよ』と言われると、なんだか嬉しかったのを思い出す。名前も知らない、レストランにも入れないその子が、幸せになるようにとささやかな願いを込めて弾いていたのだ。

 まさか、それが深春だったなんて。俺たちは出会うべくして出会ったのかもしれない。