孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

「……あ、やば。深春ちゃんに謝らなきゃ」

 聞き捨てならない発言にぴくりと片眉を上げる。

「なにかしたのか?」
「いや、なにもしてないけど。顔怖いよ」

 謝るようなことをしたのかと、俺の顔は無意識に険しくなっていたらしい。苦笑いした歩は、ちらりと深春のほうを一瞥する。

「深春ちゃん、あのレストランに来てたらしいんだよ。中には入れなかったけど、漏れ聞こえてくるピアノの演奏を聞くのが好きだったんだって」
「……え?」

 深春が聞いていた? 俺が弾くピアノを?

 予想外すぎる事実を明かされ、俺は目が点になった。歩はバツが悪そうに頭を掻いて説明する。

「それを弾いてたのは僕だって、わざと勘違いさせちゃったんだよね。そのことまだ話してなかったわ」
「わざと勘違いさせたって、どうして?」
「ほら、僕も瑛司兄ちゃんも嫉妬してたって話したじゃん? ちょっと意地悪したくなっちゃってさ~……はい、ごめんなさい」

 じとっとした視線を向けると、へらっとしていた歩はすぐに平謝りした。

 早く教えてほしかったのはヤマヤマだが、今は驚きのほうが大きくて、ガラにもなく胸が騒いでいる。