孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

 彼は穏やかな表情で言い、手に持ったままの書類を軽く掲げてみせる。

「後で承認をする。今は早くしたほうがよさそうだ」

 認める意思を見せた父にほっとしたのもつかの間、彼がちらりと視線を向けた先ではスタッフたちがおろおろしている。さすがに長話しすぎたか。

 リハーサルが間に合わない!と皆が慌ただしく動き出す。俺と深春は目を見合わせ、少々バツの悪い笑みをこぼした。

 バージンロードは、彼女の亡き父親の代わりに俺が一緒に歩く。お腹にいる子と三人で永遠を誓うための道を進むというのも、なかなか素敵じゃないだろうか。

 花嫁に親族がいないなんて、と陰口を叩く者もいるだろう。だが、深春はしゃんと背筋を伸ばして堂々としている。俺も、彼女のそばでずっと守り続けるから心配いらない。

 祭壇の前で永遠の愛を誓い、ベールを上げて微笑み合う。

 ゆっくり唇を寄せる俺たちの胸に、もう階級の証はない。他人の評価など気にせず、俺たちらしく幸せに生きていこう。