孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

 もちろんそうならないよう対策はしたが、一連の流れを知らない深春は心配そうな顔をしている。これだから、階級制度というのはくだらない。

「でも、俺たちにはもう関係のない話だ」
「関係ない?」

 俺の呟きに、父はぴくりと片眉を上げた。

 式が終わった後でいいかと思っていたが、この際厄介事を解決させてしまいたい。

 いつリハーサル開始の声をかけようかと、そわそわしている式場のスタッフのほうを振り向いて確認する。

「時間、まだ余裕がありますよね?」
「あ、はい……! あと二十分くらいでしたら」

 腕時計を見て答える女性に頷いた後、スタッフさながらに常についている佛さんに指示を出す。

「佛さん、例のものを」
「承知いたしました」

 理解が早い彼は最高の執事だと思う。すぐにチャペルを出ていく彼から、再び父に目線を戻す。

「俺は、ずっと階級制度は必要ないと考えていました」

 脈絡もなくそう言うと、皆が黙り込んで俺に注目する。結婚式の直前とは思えない雰囲気だ。

「この制度を廃止するには、御三家の当主の同意と、すべての一族から過半数の賛同を得なければならない。そうですよね」
「ああ」

 静まり返ったチャペルには、オルガンや讃美歌ではなく俺と父の声だけが響く。