孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

「薔薇が十五本あるのは〝ごめんなさい〟の意味。白のポインセチアの花言葉は〝あなたの祝福を祈る〟。ご家族から深春さんへの、精一杯の気持ちなんじゃないかな」

 花束に込められたメッセージがわかった途端、深春の瞳にみるみる涙が溜まっていく。

 それがひと粒こぼれて、香苗さんは「あ~、せっかくの翼さんのメイクが落ちちゃう」と、慌ててハンカチを差し出して笑った。

 改心し始めたのは鮫島さんだけではなかったらしい。それが一時的なものではないことと、深春の心がさらに潤っていくことを切に願う。

 泣きながらも嬉しそうな彼女に俺も表情をほころばせていると、おもむろに父が近づいてくる。

「奏飛か? 今日鮫島さんが来るよう仕向けたのは」
「ええ」

 素直に認めると、涙を拭った深春が驚いた顔で俺を見上げた。父は、表情はいたって普通だが厳しさを湛えているのがわかる。

「奏飛にしては浅はかじゃないか? 彼の素行は知っているだろう。何事もなかったからよかったが、もし式の本番で問題を起こされていたらお前もタダでは済まなかったぞ」
「降任されていたんでしょう。心得ていますよ」

 式には財閥一族やら政治家やら、権力を持った人間が多数訪れる。そこで黒凪家の品位を損なう事態が起これば、罰を受けるのは免れられないだろう。