孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

 鮫島さんはぽりぽりと頭を掻き、いたたまれなくなったように「じゃあ」と短く言って踵を返した。しかし、なにかを思い出したのか足を止め、もう一度こちらを振り返る。

「結婚、おめでとう」

 彼の口からこぼれたのは定番の挨拶だったが、深春の瞳にうっすら膜が張り、ようやく口元がほころんでいく。

「叔父様……ありがとう」

 彼女の明るい声が、去っていく背中に投げかけられる。今あの人がどんな顔をしているかわからないが、しゃんとした後ろ姿からは清々しさが感じられた。

 深春は雪を纏ったような花束を見下ろし、まだ半信半疑な様子で呟く。

「本当に、謝りに来ただけ……?」
「ああ。彼はこれから変わるよ、きっと」

 前向きな未来を期待して肩を抱くと、彼女は俺を見上げてふわりと微笑んだ。

 改めてチャペルへ向かう。天窓から優しい陽光が降り注ぐ白い石造りのそこには、すでに黒凪家の皆が待っていた。大理石のバージンロードは、深春のウエディングドレスも綺麗に映えそうだ。

 正装した俺たちの登場で感嘆の声が上がる中、瑛司がいたって通常運転で話しかけてくる。