孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

 俺が差し出した一枚の紙を、鮫島さんは困惑気味に見下ろす。けじめの意味がわからないほど愚かではないだろう。

「俺なんかが行っても、それこそ迷惑になるだけでしょう」
「まあ、来たからといって私は対価を払う気もありませんし、あなたにとって利益はないでしょうね。無論、迷惑行為をすればそれなりに対処します」

 深春に謝れば援助してもらえると誤解させたくないし、それでは本当の謝罪にならないのでしっかり伝えておく。

「ただ、あなたが根本から変わる第一歩にはなると思います。確実に」

 なんの得にもならないと承知した上で、それでもこの場に来て頭を下げたら、彼が心を改めた証拠だろう。今日そのチャンスを与えに来たのは、鮫島さんではなく深春のためだ。

 用件をすべて伝えた俺は、残りのコーヒーを飲み腰を上げる。

「これまでの行いを悔いるなら、せめて深春が最高に幸せな気持ちで式を迎えられるようにしてあげてください」

 迷いを露わにして案内の紙を見つめる彼にそう告げ、事務所を後にした。