わが子を宿した愛する彼女が、純白のウェディングドレスを纏って俺に微笑みかける。天使だとかお姫様だとか、どのたとえも陳腐に思えるくらい、俺の妻は最高に美しい。

 しかし、その心が幸せ一色になるはずの結婚式当日、深春は警戒心たっぷりの瞳で式場の入り口に立つ人物を見ている。

「叔父様……!?」

 困惑と少しの怯えが交ざった顔をする彼女は、俺の腕をぎゅっと掴んだ。

 これまで散々自分を困らせてきた人が、この晴れの日に現れたのだ。不安に駆られるのも当然だろう。

 だが心配はいらない。実は、彼がこんな行動に出たのには俺が関わっているから。

 白いグローブをした手に自分のそれを重ね、心配はいらないと耳元で囁く。

「大丈夫、彼はけじめをつけに来たんだ」
「え?」

 ぽかんとして俺を見上げた深春を連れ、入り口のほうへ歩み寄る。スタッフに「少しだけ時間をください」と告げて下がってもらうと、深春と一緒に鮫島さんと向き合った。

 彼は気まずそうに深春と目を合わせ、思いきって深々と頭を下げる。

「深春……すまなかった」

 突然謝罪をされた深春は、わけがわからないといった様子で目を見張った。