孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

 いくら懐が広くても、この人に情けなんてかけられない。この際、はっきり言ってしまおう。ここで諦めさせなければ、奏飛さんたちに迷惑をかけてしまいかねないのだから。

 ぐっと手を握り、気持ちを強く持って真正面から叔父を見つめる。

「叔父様たちが私にどんな態度を取っていたのか、黒凪家の皆が知ってる。もう信用を失くしているのよ。だから式にも呼ばないし、誰もあなたに協力なんてしない」

 毅然とそう告げると、叔父は眉をぴくりと上げて忌々しげに口を開く。

「お前の意見は聞いていな──」
「私は黒凪家の人間です。一族にとって害になるような人とはお付き合いできません」

 ぴしゃりと言い放った私に、彼は面食らったように口をつぐんだ。

 その隙に素早く財布から千円札を取り出し、テーブルに置いてさっさと席を立つ。「深春!」と呼び止める声を無視して、足早にカフェを出た。

 小走りで再び駅に向かい、構内に入ったところでようやく足を止めた。今になって心臓がバクバク鳴っている。

 ……叔父にあんな風に楯突いたのは初めてだ。あれでよかったんだよね?

 私の対応は間違っていないはずだと、自問自答しながら電車に乗る。ほどなくして発車したそれが、自分の気持ちも揺らしてくるような気がしてもどかしい。