ひとりでは広すぎるベッドに深春が一緒に眠るようになって、早くも三カ月が過ぎた。

 今隣に横たわる彼女は、階段から落ちた時のケガも完全に癒えて、幸せそうな寝息を立てている。

 まだ安定期でない今は抱くのを我慢しているが、またいやらしい表情も引き出してやりたい……なんて邪な思いを掻き消す。

 どちらの姿も俺を虜にさせ、愛しいという感情を与えてくれる。まだ膨らみがわからないお腹にそっと触れると、さらに幸せが流れ込んでくる気がした。

 こんなに心穏やかに過ごせる日々が、自分に訪れるとは思わなかった。こんなに、身が焦がれるほど誰かを愛せるとも──。



 深春と会うまでは結婚する気はたいしてなかった。階級制度を終わらせるために動きたいという目標はあったが、そのためだけに一緒にいられる気がしない女性と結婚したいとも思わなかった。

 見合いは薦められるままに何回かしてきたが、どの相手にも興味が湧くことはなく断り続けていた。当然といえば当然だ。俺は誰かを愛することも無意味だと思っていたのだから。

 深春と会う数週間前にも、仕事の件で会食をした国土交通省の幹部の男性から彼の娘との見合い話を持ちかけられたが、その時点で断った。

 それを知った瑛司が、後日別件で社長室にやってきた際にこう言った。