「私も、奏飛さんを幸せにしたい」

 自然に口からこぼれたのは、単純な願いだが心からの気持ちだった。

 奏飛さんは頬に当てた私の手に自分のそれを重ね、満たされたように穏やかに目を閉じる。

「君がそばにいるだけで幸せだ。深春の温かい心が、俺に大事なものを取り戻させてくれる」

 ゆっくり開いた瞳はどこか切なげでもあり、とても美しい色を湛えて私を捉える。

「これが愛というものなんだな」

 奏飛さんの顔に、今までにないほど優しい笑みが浮かんだ。私と一緒に愛を知ってくれたことが嬉しくて、感極まって涙が滲む。

 彼はギシ、とベッドに手をつき、私の髪を撫でながら唇を寄せた。情熱的なキスを交わした彼の唇が、とびきり甘い言葉を囁く。

「愛してる。ずっと、君だけを」

 ──ああ、やっと聞けた。常套句だけれど、やっぱり最高に嬉しい。

「私も、愛してます」

 瞳から温かな雫をぽろぽろとこぼしながら、人生で初めてこの言葉を口にした。

 これからも何度も伝えよう。満たされたふたつの心が、もう二度と干上がらないように。