「……香苗さんは、それほどまでに瑛司さんを愛しているんですね」
ぽつりと呟いてしゃがみ、夕日が陰って赤みがくすんだブローチに手を伸ばす。
「好き同士結婚しても別れる人もいるし、子供が生まれても愛情を与えられない人もいる。皆が皆家族になれるわけじゃない中、瑛司さんを妻として支えているだけで、香苗さんはすごいです。すごいことなんですよ」
語彙力が足りなくてもどかしくなりつつも、気持ちを込めて言う。しゃがんだまま見上げて微笑むと、彼女はかすかに生気を取り戻したような瞳で私と目を合わせた。
だから、どうか悲観しないで。立ち上がってそう伝えようとした瞬間、突然めまいが起きたようにくらっとして、頭が後ろのほうに引っ張られる感覚を覚えた。
バランスを崩して身体がよろける。一歩足を引いて踏ん張ろうとしたその下に、階段が半分しかないと気づいた時には、もう体勢を直すことはできなかった。
やばい、落ちる──!
「深春さん!」
焦った香苗さんの声が聞こえると同時に、脳裏によぎったのは赤ちゃんのこと。その後すぐに衝撃と痛みを感じ、身体が転がった。
痛い……けどそれより、赤ちゃんを守らなきゃ……。
薄れていく意識の中、奏飛さんの姿が浮かぶ。私の名前を呼ぶ香苗さんの声もどんどん遠くなり、愛しい彼の顔も闇に飲み込まれていった。
ぽつりと呟いてしゃがみ、夕日が陰って赤みがくすんだブローチに手を伸ばす。
「好き同士結婚しても別れる人もいるし、子供が生まれても愛情を与えられない人もいる。皆が皆家族になれるわけじゃない中、瑛司さんを妻として支えているだけで、香苗さんはすごいです。すごいことなんですよ」
語彙力が足りなくてもどかしくなりつつも、気持ちを込めて言う。しゃがんだまま見上げて微笑むと、彼女はかすかに生気を取り戻したような瞳で私と目を合わせた。
だから、どうか悲観しないで。立ち上がってそう伝えようとした瞬間、突然めまいが起きたようにくらっとして、頭が後ろのほうに引っ張られる感覚を覚えた。
バランスを崩して身体がよろける。一歩足を引いて踏ん張ろうとしたその下に、階段が半分しかないと気づいた時には、もう体勢を直すことはできなかった。
やばい、落ちる──!
「深春さん!」
焦った香苗さんの声が聞こえると同時に、脳裏によぎったのは赤ちゃんのこと。その後すぐに衝撃と痛みを感じ、身体が転がった。
痛い……けどそれより、赤ちゃんを守らなきゃ……。
薄れていく意識の中、奏飛さんの姿が浮かぶ。私の名前を呼ぶ香苗さんの声もどんどん遠くなり、愛しい彼の顔も闇に飲み込まれていった。



