孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

「それって……」
「そう、不妊症ですって。ちゃんと検査して、私のほうに問題があるってわかってる」

 香苗さんは目の前に続く石の階段に力なく目線を落とす。

 ふたりの結婚した時期からして、今も子供がいない理由はもしかしたら……と考えてはいた。また別の問題かもしれないとも思ったけれど、やっぱりそうだったんだ。

 彼女の悩みがはっきりして、私も胸が苦しくなる。本人はどれだけつらいだろうか。

「毎月毎月、今回こそはって期待して、生理が来るたびに落ち込んで……。排卵誘発剤を使ってタイミングを合わせるのも、人工授精も、精神的につらくなるばかりなのよ」

 階段を一段ずつ下りると共に、抱え込んでいたであろう本音が徐々に吐露されていく。

 中間踊り場でふと足を止めた彼女は、苦しげにしつつ口角を上げて私ににじり寄る。思わず一歩足を引いた。

「ねえ、つわりはあるの? 赤ちゃんの心臓が動いてるってどんな感じ? 幸せでたまらないでしょう」
「香苗さん……」
「私はそのどれも経験できないの。このまま妊娠できなかったら、私は瑛司さんに捨てられるかもしれない……!」