もし奏飛さんがこれまで誰も愛した経験がないとしたら、嫉妬するのも初めてなんだろうか。私が彼の初恋相手だったらいいな、なんて贅沢な願いを抱いてしまう。

 とにかく、早く気持ちを確認し合いたい。ドキドキと心地よく鳴る心臓の音を感じながら、「帰ってきたらちゃんと話し合わなきゃ」とひとりごちた。

 しかし、彼と話し合いたいのはそれだけじゃない。

「それとね、もうひとつ大事なことが……」

 真面目な顔になる沢木さんに、私は自分の体調について話し始める。

 朝はなんとか起きて奏飛さんをお見送りできたものの、気持ち悪さが復活してしまい、またベッドに戻ってしばらく寝ていた。

 下痢はしていないし、胃腸炎とは違うと思う。こんなに具合がよくならないなんて、まさか……と薄々感じていた可能性が濃厚になってきたのだ。

 症状を明かすと沢木さんがみるみる目を丸くし、ついにガタッと椅子を揺らして勢いよく腰を上げた。

「深春様! それは妊娠の初期症状だと思いますよ!?」
「だよね」

 そう、生理が遅れているという一番わかりやすい症状が出ていたのに、今朝まで気づかなかった。これまで生理周期を気にする習慣がなかったから。