孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

 私は興奮気味に沢木さんに迫る。

「そうなんだ! いつから、なにがきっかけで? 沢木さんは、上流階級の人たちとは一線を引いているものだと思ってたからびっくり」
「引いていますし、毛嫌いしておりましたよ。強欲で傲慢な方ばかり見てきましたから」

 チケットを握りしめる彼女は、若干冷ややかな口調でそう言った。

 以前聞いた話によると、沢木さんの家は代々財閥家の家政婦や使用人を務めていて、昔からクセのある富豪の方々と接してきたらしい。

 私がここに来た当初、発言に少し棘があったのは、私もお金にがめつい女だと思われていたからなのだろう。

「でも……そういうのを飛び越えてしまうのが恋じゃありませんか。歩様は、ただの家政婦である私にも平等に接してくれますし、楽しい方だし可愛いし……」

 徐々に照れてもごもごする沢木さんに、可愛いのはあなたのほうだよと言いたい。

 自分が恋をした経験がなかったので、誰かと恋愛話する機会もなかった私は、嬉しいやら楽しいやらで悶える。

「そっかそっか~、うまくいってほしいな。私、全力で応援する!」
「応援は特に必要ありませんので」

 瞬時に無表情に戻り、手のひらをこちらに向けて制する彼女。そこはクールなのか、とツッコむより先に笑いがこぼれ、沢木さんもつられて口元をほころばせていた。