孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

「まあまだ先だから、ふたりとも考えておいて。僕はこれで仕事に戻るよ。じゃあね」

 ドアを開ける歩くんに「わざわざありがとう!」と声をかけると、彼はひらひらと手を振って颯爽と帰っていった。

 ふたりきりになり、私はいまだに硬直している沢木さんに意気揚々と話しかける。

「ね、せっかくだから一緒に行こうよ。私も沢木さんが来てくれたら嬉しい」

 と言ったものの、家政婦さんのルールが厳しそうだったのを思い出した。沢木さんはこういうお誘いに十中八九乗らなそうだし、あまり盛り上がってもいけないか。

「あ……家政婦さんは〝プライベートに介入しちゃいけない〟みたいな決まりがあるのかな。でも、歩くん直々のご指名なら──」
「行きます行きます絶対行きます」

 こちらの言葉を遮って早口で答える沢木さん。めちゃくちゃ乗り気だった。

 目を輝かせてチケットを見つめる彼女は、明らかに普段と様子が違う。この乙女な表情は……。

「沢木さんってもしかして、歩くんが好きなの?」

 ある程度の確信を抱きつつ確認してみると、彼女の顔がぼっと火がついたように赤くなった。

 かっ、可愛い! 歩くんの言った通りいつもポーカーフェイスの彼女が、こんなに乙女な反応をするとは。