「この曲、銀座のレストランでよく生演奏をしていて。私、それを聞くのがすごく好きで癒されてたんです!」
私の勢いにびっくりしたのか、歩さんは目をぱちくりさせた。数秒の間があった後、信じられないという顔をして身を乗り出す。
「うそ、深春ちゃんレストランに来てたんだ? すごいね、運命的!」
彼の反応を見て、あのピアニストは歩さんだったのか!と感動が込み上げる。まさか、こんなに近くにいたなんて。
「ほんと、すごい……! 私は中に入れなかったので、正確には外に漏れてきた音を聞いていただけなんですけど、まさか歩さんが弾いていたとは」
両手を口元に当てて感激する私に、彼はクスッと笑って椅子に座り直す。
「これはシューマン=リストの〝献呈〟っていう曲。もう一回弾く?」
「ぜひ!」
ふたつ返事でお願いすると、歩さんは快く姿勢を正して弾き始めた。
あまり抑揚がなく落ち着いていて、ずっと夢の中にいるみたいな幸せな気持ちにさせてくれる曲。弾いている歩さんも終始柔らかな笑みを浮かべていて、とても心地よさそう。
しかし、つい一カ月ほど前のことをぼんやりと思い返しながら聞いていた私は、今日はあの時とどことなく違う感覚を抱いた。
私の勢いにびっくりしたのか、歩さんは目をぱちくりさせた。数秒の間があった後、信じられないという顔をして身を乗り出す。
「うそ、深春ちゃんレストランに来てたんだ? すごいね、運命的!」
彼の反応を見て、あのピアニストは歩さんだったのか!と感動が込み上げる。まさか、こんなに近くにいたなんて。
「ほんと、すごい……! 私は中に入れなかったので、正確には外に漏れてきた音を聞いていただけなんですけど、まさか歩さんが弾いていたとは」
両手を口元に当てて感激する私に、彼はクスッと笑って椅子に座り直す。
「これはシューマン=リストの〝献呈〟っていう曲。もう一回弾く?」
「ぜひ!」
ふたつ返事でお願いすると、歩さんは快く姿勢を正して弾き始めた。
あまり抑揚がなく落ち着いていて、ずっと夢の中にいるみたいな幸せな気持ちにさせてくれる曲。弾いている歩さんも終始柔らかな笑みを浮かべていて、とても心地よさそう。
しかし、つい一カ月ほど前のことをぼんやりと思い返しながら聞いていた私は、今日はあの時とどことなく違う感覚を抱いた。



