孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

 食事会はわりと和やかに終わり、皆思い思いに過ごし始める。お義父様と奏飛さん、瑛司さんは真剣に仕事の話をしていて、お義母様と香苗さんはダンスの話で盛り上がっている。

 この間のこともあって香苗さんの様子が気になっていたけれど、今日はいたって普通なので安心した。

 一方、私はどの話題にもついていけないので、食器の片付けを手伝おうとしたものの、やはりここでも家政婦さんたちに断られてしまった。

 この時間をどう過ごそうかとちょっぴり困って廊下に出た時、どこからかピアノの音色が聞こえてくる。

「あれ、この曲……」

 しばし耳を澄ませてはっとした。これはレストランの外でよく聞いていた、穏やかで綺麗な曲だ。

 いてもたってもいられず、音のするほうへ足を進める。螺旋階段を上ると広いリビングがあり、そこから聞こえてくるようだ。

 扉のないその空間にひょいっと顔を覗かせると、一段高くなった場所にグランドピアノがある。そこに座って軽やかに鍵盤をはじいているのは、なんと歩さんだった。

「お、びっくりした。どうしたの?」

 こちらに気づいて手を止めた彼に、私は興奮気味に近づく。