そうだよね、何事もやってみないと。基本動物は好きだし、馬とも仲よくなれるはず!……と、前向きに考えておこう。

「なんとか頑張ります。妻に習わせるくらいだから、もちろん黒凪家の三兄弟もできるんですよね?」
「ええ。皆カッコいいわよ~。学生時代は競技会に出た経験もあるらしいから、正装をしたらさらに絵になると思う。まさに白馬に乗った王子様ね」

 正装というと、ジャケットを着てスリムなパンツと革のロングブーツを合わせたスタイルか。奏飛さんがその格好で颯爽と馬を走らせていたら……あまりのカッコよさに失神するかも。

 香苗さんもきっと瑛司さんの姿を想像しているのだろう。お互いにうっとりしてため息を漏らした。

「すごいなぁ。ピアノも乗馬もできるなんて……本当に貴族って感じですね」

 感心しきりの私に、香苗さんは思い出したように「ピアノと言えば」と切り出す。

「この間のパーティー、ふたりが帰った後、藤堂さんは旦那さんにも怒られて抜け殻みたいになっちゃってたのよ。自業自得だけどね。瑛司さんから少し聞いたからなんとなく事情はわかってる」

 彼女は残りのショートケーキにフォークを刺し、呆れ交じりの苦笑を浮かべた。

 私も例の一件を思い出し、やや前のめりになって言う。