孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

 内心どぎまぎしながら、パーティーに参加すると決まった時にお義母様に言われたことを思い出す。

『上位中流階級の人間だというのを肝に銘じて、品位のある行動をするように。くれぐれも、黒凪家に泥を塗らないでちょうだいね』

 ここで正直に断るか、ねこふんじゃったを披露するか、どちらが泥を塗らないかといったら確実に前者だろう。

 なにを言われても仕方ないと覚悟してお断りしようとした時、藤堂さんは一緒にお手洗いにいたもうひとりの女性に声をかける。

「ねえ、奏飛さんの奥様にピアノを弾いてもらいましょうよ」
「あ~いいわね! アッパー・ミドルになるくらい教養のある方なら、弾けて当然ですもの」
「あの、私は……!」

 こちらの言い分も聞かず、藤堂さんはピアノのほうに向かって私の背中を押す。きっと私の反応を見て弾けないと確信したのだろう。恥をかかせるにはもってこいだ。

 ここで抵抗すると余計に注目が集まると思い、私は誘導されるがまま椅子に座らされてしまった。

「さあ、どうぞ。あなたとご主人の名誉のために」

 両肩に手を置かれ、耳元で悪魔のように囁かれた。

 鍵盤を見下ろすも、そこに手を乗せる自信がない。さすがに無理だ。やっぱりピアノは弾けないと認めるべきだろう。