孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

 藤堂さんから笑みが消え、一瞬怯んだ様子を見せた。しかし、彼女も当然このまま引き下がるわけがなく、嘲るように片方の口角を上げる。

「やぁね、負け惜しみかしら。もっともらしいことを言っているけど、逆に見苦しいわよ」
「私たちの名誉を守っているだけです。〝上流は下流を蔑んだり見下したりせず、敬意をもって接する。下流は上流の前でも自らを卑下したり、卑屈な態度を取ったりしない〟……と、お義母様から教えられましたので」

 私も嫌みを込めてしまったが、勉強会の時にお義母様に指南されたのは本当だ。それぞれの立場を認め合って生きていくのが階級社会なのだと。

 藤堂さんの余裕の表情が、みるみる不満げに変わる。いら立ちが伝わってくる様子で数秒考えを巡らせた彼女は、なにかを思いついたらしく無表情で口を開く。

「相応しいのであれば、あなたもこのルビーに恥じない嗜みができるんでしょうね? あのピアノを弾いてくださる?」
「えっ」

 会場の隅に置かれたグランドピアノを指差され、ギョッとした私は思わずまぬけな声を漏らした。

 そ、そうきたか! ピアノなんて〝ねこふんじゃった〟しか弾けないんですけど……!