孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

 その瞬間、冷笑を湛える藤堂さんの瞳が悪意を含んだものに変わった。

「あら、まさかご主人の仕事内容を把握していらっしゃらないのかしら? 社長婦人たるもの、働く旦那を陰から支えるのが常識ですのに」

 ねっとりとした嫌味っぽい声が纏わりつく。しかし、この挑発に乗ってはいけないとぐっと堪え、なるべく穏和に下手に出る。

「すみません、至らないことばかりで」
「ああ、謝る必要はないのよ。まだ嫁いだばかりだものねぇ」

 気遣う言葉が聞こえてきたのもつかの間、彼女は私を蔑むように見下す。

「でも、あなたのような人がどうして娶られたのかは疑問だわ。奏飛さんもお父様と一緒で、捨てても構わないような女性に惹かれるのかしら」

 聞き捨てならない発言に、いよいよ私の表情が強張る。

「なにを、言ってるんですか……?」
「奏飛さんも災難ね、ってことよ。愛人にしかなれなかったお母様のもとで育ったから、こんな結婚をしてしまったのね」

 明らかな雑言に、私の中でストッパーとなっていた糸がぷつりと切れる。

 そしてすぐに察した。この人は私たちの階級が上がるのも、私自身のことも気に食わなくて攻撃する機会を窺っていたのだろうと。