階級を上げるための結婚だと割り切っていたはずだったのに、やっぱり夫婦の間に愛情がないのは寂しいと思う。それは覚悟できていないということになるんだろうか。
用を足して浮かない気分で会場へ戻ると、奏飛さんは参加者の男性と話をしているところだった。仕事の話をしているなら邪魔しちゃいけないよね、と遠目で見ていた時、ふと視線を感じて振り向く。
そこにいたのは、先ほどお手洗いで話していたひとりの中年女性。三大財閥のひとつ、藤堂不動産社長のご婦人だったので、一気に警戒心が高まる。
彼女は「黒凪さん」と私を呼び、こちらへ近づいてきた。綺麗だが少々きつめの顔立ちの彼女は、どこか胡散臭い笑みを浮かべて私を見下ろす。
「一度あなたとお話してみたかったの。お互い不動産会社社長の妻としてよろしくね」
「はい、よろしくお願いいたします」
内心なにか裏がありそうだと勘繰りつつも、表面上は愛想よく返した。
しばし世間話をしてから、彼女は意味深に口角を上げて話を変える。
「そうそう、代官山エリア再開発の件、あなたはどうお考えかしら? 参考までに意見を聞かせてほしいわ」
「再開発……?」
おそらく奏飛さんの仕事についてなのだろうが、それ以外はなんのことやらわからず、小首をかしげる。
用を足して浮かない気分で会場へ戻ると、奏飛さんは参加者の男性と話をしているところだった。仕事の話をしているなら邪魔しちゃいけないよね、と遠目で見ていた時、ふと視線を感じて振り向く。
そこにいたのは、先ほどお手洗いで話していたひとりの中年女性。三大財閥のひとつ、藤堂不動産社長のご婦人だったので、一気に警戒心が高まる。
彼女は「黒凪さん」と私を呼び、こちらへ近づいてきた。綺麗だが少々きつめの顔立ちの彼女は、どこか胡散臭い笑みを浮かべて私を見下ろす。
「一度あなたとお話してみたかったの。お互い不動産会社社長の妻としてよろしくね」
「はい、よろしくお願いいたします」
内心なにか裏がありそうだと勘繰りつつも、表面上は愛想よく返した。
しばし世間話をしてから、彼女は意味深に口角を上げて話を変える。
「そうそう、代官山エリア再開発の件、あなたはどうお考えかしら? 参考までに意見を聞かせてほしいわ」
「再開発……?」
おそらく奏飛さんの仕事についてなのだろうが、それ以外はなんのことやらわからず、小首をかしげる。



