孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

「私が小学三年生になる時に、兄さんは黒凪家に来ました。母親の女性が亡くなり、父が引き取ると決めたんです。とても貧相な格好で、痩せ細っていて、貧しい生活をしていたのは明らかでした」

 まばゆい夜景を見下ろして話す彼は淡々としているけれど、こちらは聞いているだけで胸が痛くなる。奏飛さんがそんな幼少期を過ごしていたとは、想像もしなかった。

 この前、佛さんが『昔から一番気にかけていた』とか、『彼の境遇を思えば仕方ない』と言っていたのもこういう理由だったのだろう。

「うちに来てからの兄さんは品位と知識を身につけて、財閥一族の名に恥じない男にみるみる成長していきました。ですが、今みたいに出生のことで陰口を叩かれるのは日常茶飯事だと思います。そういった環境のせいか、彼は周りと極力関わろうとしないんですよ」

 クールな瑛司さんの表情にも、わずかに影が落ちているように見えた。

 奏飛さんがどれだけ努力をしたかは想像に容易い。周りから忌避されるつらさも、私にはよくわかる。そしてきっと、彼も私と会って同じように感じただろう。

「奏飛さんが私を選んだのは、自分と同じく恵まれない境遇だったからなのかもしれません。だから私が欲しい言葉を与えて、優しくしてくれるんですね……」