孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

 ものすごく不満そうにしているので、私はめちゃくちゃ気まずくなって頭を抱えた。やっぱりよく思わない人もいるよね……。

 このまま盗み聞きしていてもいいことはないだろうし、一旦会場に戻って出直そうとしたその時。

「まあ、いいんじゃない? いくら足掻いたっていずれ会長の座に就くのは、きっと瑛司さんだもの」
「そうよねぇ。だって、生粋の黒凪家の長男は彼なんだし」

 彼女たちの口から不可解な内容が飛び出し、私は眉をひそめる。

〝生粋の黒凪家の長男〟って? それが瑛司さんってどういう意味?

 理解できなくて固まっていると、彼女たちが動き出す気配を感じた。慌ててトイレを出てすぐの死角になる場所に隠れ、静かにじっとする。

 出てきたふたりは、先ほど挨拶した時は愛想よくしていた旧財閥一族の奥様方だ。彼女たちは私に気づかず話し続ける。

「黒凪不動産の社長だって、本当は相応しくないと思わない? 会長の愛人の子だっていうのに」

 ──愛人の子?

 衝撃的なひと言が耳に飛び込んできて、心臓がドクンと音を立てた。

「きっとお情けで与えられた地位なのよ。さすがに次期会長の座は瑛司さんに渡すでしょう」
「気の毒なこと」

 ふたりは嘲るように笑いながら通り過ぎていく。なんとかやり過ごせたものの、私は身をひそめた格好のまま動けない。