孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

 それからは、豪華な料理を堪能しながら時々皆さんとお話をして、有意義な時間を過ごした。会場の空気にはだいぶ慣れたものの、皆さんのセレブエピソードには驚愕してばかりだ。

 会が終了するまであと三十分ほどのところで、奏飛さんに「ちょっとお手洗いに行ってきます」と声をかけて会場を出た。

 廊下にはほとんど人がおらず、静かでほっとする。何事もなく終わりそうだなと、最初に比べて軽くなった足取りで化粧室へ向かう。

 しかし奥へ進もうとした瞬間、パウダールームから話し声が聞こえてきて足が止まった。

「黒凪家の奏飛さん、結婚して昇任されたんですってね」
「これまで誰も寄せつけなかった孤高の狼がスピード婚だなんて、なにか裏がありそう」

 おそらく中年の女性ふたりが、棘のある口調で奏飛さんについて話している。私にも関係ある話なので中に入っていけず、その場に立ち尽くす。

「黒凪家の財産って、アッパーにならないと取り分がかなり減るって話でしょう。それが目的なんじゃないの」
「だからって、あんな田舎臭い子と結婚する? いい家柄でもない超庶民みたいだし、納得いかないわ。うちの娘だって、何回もお見合いしてやっと名家に嫁いだっていうのに」