孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

 途中、主催者である旧華族の当主のスピーチで本格的にパーティーが始まったものの、私たちの食事は後回し。三十分以上かけて、やっと主要な人への報告が済んだ。

 歓談する人たちから少し離れたところに移動し、奏飛さんが言う。

「疲れただろ。俺たちも食べよう」
「はい。もしお仕事の話があるなら、私のことは気にせず行ってくださいね」
「ああ、ありがとう」

 ひとまずミッションは完了したので、あとは存在を消して料理を楽しんでいたい……。なんて考えていると、奏飛さんはひとつため息を吐く。

「でも、俺も疲れた。早く帰りたい」

 彼らしからぬ幼げな発言がこぼれ、私は思わずぷっと噴き出した。

「子供みたいですね」
「こういう場はあまり好きじゃないんだ。どうしても仕事以外の話に付き合わなきゃいけないからな。他人の家族や趣味の話とか、正直どうでもいい」

 言葉尻はかなり素っ気ないもので、私の顔から笑みが消えていく。

 そして、ふと思い出した。『他人は基本どうでもいいんだって』という、翼さんの言葉を。

 奏飛さんは誰に対しても優しいわけじゃないんだっけ。今も、楽しそうに歓談している皆をどこか冷めた瞳で眺めている。どうしてそんなにドライになってしまったんだろう……。