「ホック、留めてなかったぞ」
「あっ!?」
言われて気づいた。どうやら背中のファスナーを上げただけで、スプリングホックを留めていなかったらしい。
デコルテの部分やひらひらとした袖がレースになっていて、ふんわり揺れるロングスカートのドレス。これを完璧に着ることすらできない自分が情けないけれど、気づいてくれて助かった。
「ありがとうございます! 恥ずかしい……。こんな調子で粗相をしないか不安です」
「なにか問題が起こっても、俺がフォローするから心配いらない。それより、周りの奴らのほうが気になる」
私のドレスと同じすみれ色のポケットチーフを忍ばせ、アッパー・ミドルの証であるルビーのネクタイピンをつけた奏飛さんは、今日も頼もしくて素敵だ。
しかし、『周りの奴ら』と言うその顔に笑みはない。
「基本的に俺が一緒にいるから大丈夫だと思うが、君に悪意を向けてくる人がいないとも限らない。黒凪家だけでなく、旧財閥には階級が上がる者に対する妬みや僻みを持つ人間が少なくないから」
「ですよね……」
そう、いろいろな考えの人が今日の場に集まる。奏飛さんはただの御曹司ではなく、三大財閥のひとつである黒凪家の長男だ。その妻となった私に向けられるものは、決していい感情ばかりではないだろう。
「あっ!?」
言われて気づいた。どうやら背中のファスナーを上げただけで、スプリングホックを留めていなかったらしい。
デコルテの部分やひらひらとした袖がレースになっていて、ふんわり揺れるロングスカートのドレス。これを完璧に着ることすらできない自分が情けないけれど、気づいてくれて助かった。
「ありがとうございます! 恥ずかしい……。こんな調子で粗相をしないか不安です」
「なにか問題が起こっても、俺がフォローするから心配いらない。それより、周りの奴らのほうが気になる」
私のドレスと同じすみれ色のポケットチーフを忍ばせ、アッパー・ミドルの証であるルビーのネクタイピンをつけた奏飛さんは、今日も頼もしくて素敵だ。
しかし、『周りの奴ら』と言うその顔に笑みはない。
「基本的に俺が一緒にいるから大丈夫だと思うが、君に悪意を向けてくる人がいないとも限らない。黒凪家だけでなく、旧財閥には階級が上がる者に対する妬みや僻みを持つ人間が少なくないから」
「ですよね……」
そう、いろいろな考えの人が今日の場に集まる。奏飛さんはただの御曹司ではなく、三大財閥のひとつである黒凪家の長男だ。その妻となった私に向けられるものは、決していい感情ばかりではないだろう。



