月下の逢瀬

「お。椎名、今日は別人みてえ」


「綺麗でしょ? あたしが髪をセットしたんだー」


コウタくんがあたしを見て少し驚いたように言って、結衣は自慢げにあたしの肩を叩いた。


「中、入れよ。結構手が込んでんだ。面白いぜ」


コウタくんに促されて中に入った。
輪投げやボーリング、隅ではカードゲームをしているようだった。
そして一番目立つ黒板前には、ぴかぴか光るダーツボード。


「わ、ダーツまであんの? すごい」


「集めるの苦労したんだ。お陰でほら、一番人気」


ホントだ、と見ると、そこには理玖がいた。同じクラスの男の子たちと笑顔で話している。


「宮本がめちゃくちゃ上手いんだ。あいつに勝つと賞品だしてる。って言っても小さなぬいぐるみだけどな」


「へー。理玖くんって特技もかっこいー」


「うわ、お前オレの前でそんな褒めんなよな」


楽しそうに会話する二人。
あたしはそれを聞きながらも、理玖の姿を追っていた。

男の子同士だと、理玖は素直な笑顔を見せる。その笑顔がたまらなく好きだ。

と、理玖がそれよりももっと柔らかな笑みを浮かべた。

腕に飛びついた玲奈さんに向かって。