月下の逢瀬

あたしから机一つ分離れたところに集まっていたのは、水泳部の子たちだった。
隣のクラスの子も混じっていて、その顔はみんな険しい。


水泳部って、玲奈さんもだよね。


体育の授業の時の、玲奈さんの綺麗なクロールを思い出す。
地区大会にも出場した玲奈さんの泳ぎはとても滑らかで、見とれるほどだったっけ。

同じ部活だし、彼女たちとも仲がよかったと思うけど、喧嘩でもしたんだろうか。


『とにかく、あんなの絶対許さない』


中心にいた子、渡辺さんが厳しい声で言った。
渡辺さんは、理玖が好きだと前から公言していた子。
艶々した長い黒髪の、和風人形のような渡辺さん。いつもは穏やかに笑っている彼女が眉間に深いシワを刻んでいた。


渡辺さんも、ショックを受けてるんだ……。


今、潰れそうな痛みを抱えているのは、あたし一人じゃないんだ、と思う。

けど、渡辺さんやその周りの子たちの顔は、ただショックを受けているとは言い難いくらい、難しい顔をしていて。


さっきの言葉もあるし、理玖と玲奈さんには何かあるのだろうか。


ざわりと波立った気持ちに蓋をするかのように、あたしは再び机に突っ伏した。