「ち、違う、よー。玲奈さんが怪我をしたのは本当だけど、それは理……宮本くんのせいじゃないもん。
それに、二人はその前から付き合ってた、し」
ふ、と飛んだ意識を慌てて引き戻す。
大げさに首を振って、明るく言ってみせたつもりだけど、手はまだ微かに震えている。
それに気付かない二人は、困惑したように顔を見合わせた。
「それ、本当ですか?」
「うん。中学の時もそんな噂があったんだけど、宮本くんがすごく怒って否定したんだよ。
だからもう誰もそんなこと言わなくなったんだけど……。
その話、宮本くんにしたらダメだよ? 怒らせたくないでしょ」
ね? と少し力を込めて言うと、彼女たちは途端に顔を曇らせた。
「そう、なんですか……。分かりました」
「呼び止めて、すみません」
気まずそうに頭を下げ、ぱたぱたと走り去っていく背中。
それを見送りながら、深く息を吐いた。
上手く、やり過ごせたよね。
今だ震える手をぎゅっと握った。
考えないように、もう忘れようとしていたのに。
こんな風にふいに話を持ち出されるなんて。



