「――あ、来たね。はい、これ」
少し緊張しながら職員室へと入ったあたしに気付いた先生は、小ぶりな紙袋を掲げた。
中には、あたしが読みたいと言っていた推理小説が数冊入っていた。
「結構冊数があるから、小分けにしてみた。読み終わったら続きを貸すよ」
昨日のことがまるで嘘のように感じられるくらい、優しい笑み。
それに躊躇いながら、もごもごとお礼を言った。
「ありがと、ございます」
「いえいえ。他にもオススメの本があるから、よかったら貸すよ」
「あ……は、い。すみません」
「うん。じゃあ、気をつけて帰ってね。あ! 佐藤先生ー」
そう言うと、先生はふいとあたしから視線を外して、背中を向けた。
奥にいる佐藤先生と話し込みだした先生の背中に小さく頭を下げて、あたしは職員室を出た。
親しげにされても困るけれど、あまりの呆気なさに、少し戸惑った。
本当に、昨日のことは現実だったんだろうか?
さっきの片桐先生からは、何の翳りも感じられなかった。
ふ、と息を吐く。
気負ってきたけど、すんなりと済んでよかった。
少し緊張しながら職員室へと入ったあたしに気付いた先生は、小ぶりな紙袋を掲げた。
中には、あたしが読みたいと言っていた推理小説が数冊入っていた。
「結構冊数があるから、小分けにしてみた。読み終わったら続きを貸すよ」
昨日のことがまるで嘘のように感じられるくらい、優しい笑み。
それに躊躇いながら、もごもごとお礼を言った。
「ありがと、ございます」
「いえいえ。他にもオススメの本があるから、よかったら貸すよ」
「あ……は、い。すみません」
「うん。じゃあ、気をつけて帰ってね。あ! 佐藤先生ー」
そう言うと、先生はふいとあたしから視線を外して、背中を向けた。
奥にいる佐藤先生と話し込みだした先生の背中に小さく頭を下げて、あたしは職員室を出た。
親しげにされても困るけれど、あまりの呆気なさに、少し戸惑った。
本当に、昨日のことは現実だったんだろうか?
さっきの片桐先生からは、何の翳りも感じられなかった。
ふ、と息を吐く。
気負ってきたけど、すんなりと済んでよかった。



