瞳は優しい光があったけれど、真剣だった。


「俺は椎名が欲しい。多分、惚れたんだと思う」


「だ……って、『先生』なのに……」


「『先生』が嫌? 職業変えたら、椎名は俺を見る?」


あたしが嫌と言えば、すぐにでも仕事を辞めそうな、そんな口調。

慌てて首を横に振った。


「ま、急にこんな事言っても困るよな。この話は、とりあえず今日はおしまい」


にこ、と笑った先生は明るく言った。


「今日は連れまわしてすまなかった。また明日学校で、だな」


「せんせ……」


「明日の休み時間、職員室の俺の所へおいで。約束の本を持って行くよ」


撫でていた手のひらが離れた。


帰って、いいの?
あたしはおずおずと先生の顔を見た。


「そんな顔したら、キスするよ?」


「か、帰ります!」


バッグを持って、ドアに手をかける。
開ける前に、振り返った。


「あ! あの……」


「あいつのことは、言わないから大丈夫。その代わり、俺を避けたりしないように」


まずは、明日ね? と言う顔は、いつもの片桐先生の優しい表情。


「……はい」


「よろしい」