月下の逢瀬

何も言えなかった。

三年前の決断。
その結果を、今理玖が実感しているのだろうとわかった。



仕方ないんだよ。
苦悩した横顔に、呼び掛ける。

仕方ない。
だってあたしたちは、選べなかった。
全てを捨てても、抱き合うことを選べなかった。


あたしは弱くて。
理玖は哀しいくらい、優しかったから。


だから、後悔しないで。
戻れない過去の自分を、悔やまないで。




「……あたし、幸せなんだ」


ふいに言ったあたしに、理玖がはっと顔を向けた。


「優月と晃貴さんとのね、生活。
最初はちょっと、子育てに躓いたりもしたけど、今はもう大丈夫。

晃貴さん、ああ見えてすごく親馬鹿なの。優月にでれでれなんだ。
まあ、自分の子供なんだから、当然なのかもしれないけど」


さらさらと言って、笑ってみせた。


優月はあなたの子供じゃない。
この子は、あの時あなたが選ばなかった『未来』の『形』じゃない。

あたしとの未来なんて、最初からなかったんだ。