月下の逢瀬

「日薙くんたち……いいの?」


何を言っていいのかわからなくて、思い付いたままに聞いた。


「どうせ途中で抜けるつもりだったから。

片桐先生は、元気? 一緒に、戻ってきてる?」


「あ、うん。元気。こっちで仕事があるっていうから、ついて来たの」


「そっか」


斜め後ろから、理玖を窺う。
日薙くんはひどく酔っ払っていたけれど、理玖は酔った様子はない。

抜けるつもりだったというし、飲んでなかったのかな。


「こんな風に、真緒と歩く日が来るなんてな」


ぽつりと理玖が呟いた。


「え?」


「こんな日差しの中、並んで歩けるなんてな、って言った」


『太陽の下、理玖と一緒にいたい』


それは、昔あたしが思っていたこと。
同じようなことを、理玖も思ってくれていたの?


「けど、ちょっと……いやだいぶ、想像してたのと状況が違うか」


自嘲気味にくすりと笑う。


「状況?」


「そう、状況。
真緒が、他の男のものになってる」


ばさりと切るように、言った。