月下の逢瀬

「―――真緒!」


なのに、何で。


「少し一緒に歩かせて」


何で来るの?


駆けてきたのか、少し息を切らした理玖が、あたしたちの前にまわりこんだ。


はあ、と息を整えながら、立ち尽くしたあたしを見る。


「真緒と、話したい」


「話……?」


少し怒ったようにも見えるキツい眼差しは、記憶の中のそれと変わらなかった。

昔と同じ、あたしを捕まえてしまう瞳だ……。

混乱する頭で、呆然と見返していた。


「俺たち、ちゃんと話してないままだろ」


「…………」


「あれえ? ママのおともだちだ」


「ねえ、優月ちゃん。俺も一緒にお散歩、いいかな?」


首を傾げた優月ににこりと笑いかけ、優月が頷くと、理玖はあたしに視線を戻した。

「とりあえず歩こうか」


「あ……う……、ん」


ちゃんと話してないまま。
確かに、そうだ。

理玖ときちんと話したのは、病院の中庭で池を眺めたあのときが最後。

それからは、理玖の事情を知ったあたしが、一方的に別れを告げたようなものだった。


だからって、今更何を話すの?


あたしより数歩先、優月の隣を歩く背中を見つめた。