月下の逢瀬

そうだ。
もう離れたほうがいい。
馬鹿なことを考えてしまうより、別れたほうが。
優月の言葉がないと冷静になれないなんて、どうかしてる。


身をよじる優月をおろして、その手を繋いだ。


「優月もまだ歩き足りないみたいだし、行くね。
ほら、日薙くんたち、待ってるみたいだよ?」


指差すと、タイミングよく日薙くんが叫んだ。


「理玖ーぅっ! 人妻に手をだすなよー」


あはは、と笑いがおきる。


「うるせーんだよっ!
……じゃあ、な」


「うん、じゃ……」


「ばいばいっ」


理玖に手を振る優月と歩きだす。
しばらく歩いてそっと振り返ると、花見に戻る姿があった。


よかった……。
はあ、と息をついた。


何事もなく過ぎた。


いや、でもこれが当然、なのか。
三年も経つと、環境が変わる。
現に理玖は大学生になっているし、高校では疎遠になっていた日薙くんとまた仲がよくなっているようだった。
あの花見グループには何人も知らない女の子がいたし、
理玖はあたしの知っている環境にはもういないのだ。