月下の逢瀬

溢れた感情のやり場を探していた。

タクシーの車窓を見ながら消したはずの想い。
あの時確かに沈めたはずなのに、何故今こんなにもあたしの中に広がるの。


三年の歳月は少しも気持ちを風化させていなかったというの?


「ママー……」


首にしがみついていた優月が、おずおずと顔を上げた。
目の前の理玖を見て、小さな体に再び緊張を走らせる。


「だれ?」


「え……」


小さな声の問いに、虚をつかれた。


『誰』か、って、


『あなたの本当のパパ』


なんて言えるはずがない……。



「ママの、昔のお友達かな」


言い躊躇ったあたしより早く、理玖が答えた。


「おともだち?」


「そうだよ。お名前は、ゆず、かな? ゆずちゃんでいいの?」


優しく穏やかに聞く理玖に、優月が体の力を抜いた。


「ちがーう! ゆじゅきなの!」


「ゆずき?」


ちらりとあたしに視線を寄越す。


「優月。優しい月、の優月」


「……優月、か。
優月ちゃん、とてもいい名前だね」


「うんっ」


にぱ、と笑って頷く優月に、理玖が息をのんだ。


「よく、似てる」