月下の逢瀬

理玖と玲奈さんの間に、あたしというわだかまりを残してしまいたくない。
忘れてしまう存在になりたい。


酷い女だと理玖に思われた方がいい、そう思ってあのドアを叩いた。

理玖に嫌われても構わない、と決めて。


納得して行ったはずなのに、こうして溢れる涙は、あたしの覚悟の甘さだろうか。


さっきの、理玖の驚いた顔が頭から消えない。
信じられない、と唖然とあたしを見つめた瞳。

今頃、あたしを軽蔑しているかもしれない。
身勝手な最低な嘘をついた女だ、って……。


それでいいはずなのに、傷つくなんて、わがまますぎる。


「っ!? ……ご、ごめん。ごめんね」


頭に手の温もりを感じて、気づいた。
あたしを受け入れてくれた先生の前で、理玖のことで泣き崩れるなんて、ダメだよ。
慌てて乱暴に涙を拭った手を、やんわりと止められた。


「いいから謝るな。今は気が済むまで、泣いていいから」


ぎゅ、と手を包み込むように握られて。