月下の逢瀬

「さあ、長居すると久世の体によくない。もう行こう」


おいで、と先生があたしに手を差し出した。


「あ……うん。じゃあ、玲奈さん、さよなら」


玲奈さんに頭を下げて、病室を出ようとした。
と、理玖に腕を掴まれた。


「……何?」


「片桐と……付き合ってたのか?」


低い声で呟くように言った。
じ、と見る瞳はあたしの心の揺らぎを見逃すまいとしていた。


「……そうだよ。騙すような真似して、ごめんなさい」


理玖の手を振り払って、先生の手をとった。


「じゃあ、さよなら、理玖……」


理玖の視線を避けるように、背を向けた。

ひらりと手を振って、病室を出た。


理玖はもちろん、追ってはこなかった。