月下の逢瀬

先生の逸らさない瞳を見ていると、涙が溢れた。


「な、何でぇ……? 何でそんなにあたしなんかを大切にしてくれるの?
他の男の人の子供を妊娠してる女なんて、相手にしないでよ……」


「好きなんだから、仕方ないだろ。
椎名がそこまで覚悟して産もうとしてる子供に、俺も会いたい。
父親がいないのなら、俺がなりたい。

お前が好きだよ、椎名。
人のことを思いやれる、優しいお前が好きだ。

これから仲良くやっていかないか?」


だから、ほら。と先生は再び手を差し出した。


それを見ながら、思った。

この手をとれば、幸せになれるのかな?
そう考えた時があった。

先生と共に歩くことを、想像したこともあった。

だけど、こんな状態でさえも差し出されるとは、思ってもみなくて。


「先生……。ホントにあたしでいいの?
あたしといて、先生は幸せになれる?」


手の先にある柔らかな笑顔に聞いた。


「あたし、先生に頼っちゃうよ?
この手に、縋り付いちゃうよ?

ホントにそれでいいの?」


「いいから、こうして返事を待ってる」