月下の逢瀬

わかってる。わかってるさ。

片桐に掴まれるままうなだれていた俺は、唇をぎり、と噛んだ。


そんなこと、あんたに言われなくたって、わかってる。


「……俺が悪いことくらい、百も承知だよ。
幼なじみへの気持ちに気付いたときには、取り返しのつかない約束を玲奈と交わしたあとだったんだよっ」


手を振り払って、片桐を見据えた。


「馬鹿だよ、俺は。
安っぽい優しさで玲奈の側にいるっつったよ。
いつか来る、玲奈が俺に飽きるその日を待ってたらいいや、くらいの軽い気持ちだってどこかにあったさ。

玲奈の体のことを聞いて、家の事情を聞いて。気付いたら援助だ、婚約だってがんじがらめだった。


自分の気持ちを忘れようとしたよ!?
だけど、泣いてる真緒を、一人にはできなかった。
好きな女の涙くらい、自分で止めてやりたかったんだよっ!」


堰を切ったように口が動く。
片桐はそれを黙って見ていた。