月下の逢瀬

702号と表示されたドアを、そっと開けた。
電気を消した個室、その奥にあるベッドに近寄ると、月明かりを浴びた寝顔があった。

光のせいか青白くて、穏やかな表情だけれどやつれてみえた。
点滴を受けている腕は痛々しいくらい細くて。

真緒はこんなに痩せていたっけ?


眠る顔をじっと見下ろしていると、かたりと音がした。
振り返らなくても、誰だかはわかっていた。


「それ、栄養剤。満足に食事をとってなかったみたいだ」


「……食事?」


「ああ。悪阻も酷かったようだし、ここ数日は水分だけしかとれなかったみたいだ」


「そんなに……」


頬にかかる髪を指で払う。
こんなに面差しをやつれさせているというのに、何でさっきは気付かなかったんだろう。

真緒を見つけたとき、顔色がよくないと思った。
あのとき、もっと深く聞くべきだった。

自分のことばかりで、ちゃんと真緒を見ていなかったんだ、俺は。